月の輪郭が、今夜は見えない。
新月の直後、空には光の余白だけが残っている。
それでも夜は続き、あなたの胸の中にある何かも、静かにそこにある。
消えることなく、ただ、そこに。
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畢宿(ひつしゅく)
鳥を捕らえる網の宿。本物だけが、絡まる。
畢宿に宿る魂は、捕まえてしまう。
美しいものを。大切なものを。失ったはずのものを。
網の目に絡まったまま、それを手放せずにいる。
「もう終わったことでしょ」と言われても、
あなたの網はまだ、それを離さない。
それは呪いじゃない。
畢宿の魂は、本物にしか絡まらない。
心を動かさなかったものは、するりと抜けていく。
捕まえてしまったということは、それが、あなたにとって本物だったということだ。
手放せないのは、愛した証拠だ。
まだそこに留まっているのは、あなたの誠実さの輪郭だ。
☾ ☾ ☾
抱えたままでいい。
「引きずっている」のではなく、「忠実でいる」。
「弱い」のではなく、「本物を知っている」。
畢宿の星は今夜、暗い空の余白の中から、そう語りかけている。
あなたの網に残っているものは、あなたが本気で触れたものだ。
その重さを恥じなくていい。
その重さこそが、あなたが誰かを、何かを、深く生きた痕跡だから。
忘れられない感情を、抱えたままでいい。
今夜この場所は、そのためにある。
